ASJが進める藍藻農法

ASJ ラン藻農法

藍藻農法は、土壌に元々生息している独立栄養微生物である藍藻(シアノバクテリア)を繁茂させ、有機栄養分が豊富な土壌を醸成するとともにミネラル分を植物が吸収しやすいようにキレート化合物に変え、その結果、健康・丈夫で栄養豊富・高ミネラルな農作物を生産する農法です。

ASJが開発する土壌改良資材「エルガー資材」は有機物と石灰分に独自の微量要素を混和させた高アルカリの資材で、これを土壌に施すことにより、独立栄養微生物である藍藻の増殖・活性化を促します。藍藻は光合成により酸素を発生するとともに自らの生命活動のエネルギー物質を生み出す独立栄養微生物であり、カビなどの微生物が有機物を餌(エネルギー源)として増殖する従属栄養微生物とは異なります。

藍藻が生成した酸素とエネルギー物質は自らの増殖に使われるとともに地中での有用微生物の繁茂を促しまします。併せて藍藻は地中のミネラルをキレート化して作物がミネラルを吸収しやすくします。そして藍藻が繁茂した田畑で収穫した農産物はミネラル豊富で美味しく丈夫で日持ちの良い作物となります。

エルガー資材は微生物資材ではありません。土壌のpH(水素イオン濃度指数)やミネラル環境を整えることによって、田畑の土壌に元々いる土着の独立栄養微生物の増殖・活性化を助けるために環境を整える土壌改良資材です。

ASJはこのような藍藻農法の確立と普及を進めます。

(参照元:資料1)

藍藻について

ストロマトライト

46億年前に地球が形成されて、その10億年後に最初の光合成細菌が現れました。この細菌の光合成はその頃大気中に多く存在した硫化水素を光で分解しエネルギー物質を生み出すものでした。生物はこのエネルギー物質を使って炭酸ガスから必要な有機物質を創り出すことが出来る様になりました。この細菌は最初の独立栄養微生物であり緑色硫黄細菌の祖先で起こったと考えられています。

さらにその数億年後、今から30億年以上前に水を光で分解する光合成細菌が現れました。これが藍藻(シアノバクテリア)です。藍藻は水と二酸化炭素があれば光合成により必要な有機物質を作り出す独立栄養微生物であり、ここで初めて環境内の化学物質にほとんど依存しない生物が生まれました。藍藻は安定的に酸素を発生しましたが、発生した酸素は古代の海に大量に溶存していた鉄イオンと反応して消費されました。10億年ほどの期間が経過すると鉄が使いつくされ、発生した酸素は20億年前から大気中に蓄積され始めたと考えられています。そして大気中に充分な酸素が蓄えられると酸素を消費する生物が現れ始め、10億年前から大気中の酸素濃度は横ばいになり、現在の約21%に至っています。

水と二酸化炭素があれば藍藻は生きていけることから、藍藻は地球上の様々な環境下の様々な場所に生存しています。藍藻が地球上のあらゆる生物を下支えしているといっても過言ではありません。

藍藻は植物の中の藻類に分類されていたこともありましたが、現在は植物(=陸上植物=コケ類、シダ類、種子植物)とは明確に区別されています。現在は植物と区別されている藻類の一つに分類されることもありますが、仮に分類されたとしても「藍藻以外の藻類」と「植物」は細胞に核を持つ真核生物であるのに対して藍藻は細胞核を持たない原核生物であり、藍藻以外の藻類とはかなり“遠縁”に分類されています。

農作物と藍藻の関係は、農作物を人間に例えるなら藍藻はいわば腸内細菌(プロバイオティクス)といえるでしょう。ASJはこの藍藻を繁茂かつ活性化する資材(人間でいえばプレバイオティクス)を開発しています。

(参照元:資料2)

藍藻による土壌改良のメカニズム

一般に動物や植物が死んだり食べられたりすると、動物のヘモグロビンや植物のクロロフィルは、分解してビルビリンとなり、土に還ります。ビルビリンは4つのピロール環が横に並んだ構造になっており、動物の排泄物(糞尿)に多く含まれています。野菜を食べれば、そこに含まれているクロロフィルが腸内細菌によって分解され、ビリルビンとなって排泄されるからです。また、葉が枯れてクロロフィルが分解されるとやはりビリルビンになります。

土壌改良のメカニズム

堆肥などにみられる有機物の分解とはこの過程のことで、これを担っているのが他から栄養分を必要とする従属栄養微生物です。ビリルビンはさらに分解されると1個のピロール(C4H5N)となり、さらに分解が進めば酢酸などの有機物になります。

これに対して、独立栄養微生物である藍藻が関与するとビリルビンは、1個のピロールさらには酢酸などに分解されるのではなく、全く違った過程をたどることになります。光合成をおこなう藍藻はその過程で酸素を奪う還元作用を示し、これによってビリルビンは元のクロロフィルやヘモグロビンに戻るのです。

光合成においてはクロロフィルが光エネルギーを吸収し、還元物質を経て生体のエネルギー物質であるATPや糖がつくられます。藍藻は光エネルギーを利用して二酸化炭素を還元し、すなわち酸素を奪い、水素を与え、炭素と水素が結びついた有機化合物をつくります。そして、この還元物質を作るのに必要な水素は水を分解して得ています。水を分解して水素を取り込み、酸素は大気に放出されます。

この還元作用により動植物の分解物質であるビリルビンは藍藻の存在で再びクロロフィルになり植物の形成に役立つことになるのです。藍藻の多い土壌で育成した作物は、一般に葉の緑色が鮮やかで成長も速いのです。藍藻も光合成の過程で土壌中の栄養物などを増やし、それらを利用することにより自らの光合成を高めて増殖していきます。

土壌中ではヘモグロビンやクロロフィルからビリルビンへの分解反応と逆生成反応が並行して行われています。しかし、分解反応より生成反応のほうが優勢なのが藍藻の豊富な土壌なのです。このような土壌では藍藻の光合成反応により土壌環境が整備されていくのです。

(参照元:資料1)

エルガー資材の特色

エルガー資材が藍藻を活性化

次の3種類の藍藻について、エルガー資材の有無による増殖の違いについて調べました。

(全て、国立環境研究所から分譲)
アナベナNIES19 Anabaena cylindrica Lemmermann
シネココッカスNIES946 Synechococcus sp.
シネコシスチスNIES3758 Synechocystis sp.
  • アナベナアナベナ
  • シネココッカスシネココッカス
  • シネコシスチスシネコシスチス

(参照元:資料3)

それぞれの藍藻について、次の3種類のMDM培地(カンテン培地)を準備し培養しました。

(培地Aと培地Bの窒素分は等量となるように調整してある)
培地Aエルガー資材を入れた培地
培地B窒素分として硝酸ナトリウムを入れた培地
培地C窒素分が無い培地

これらA、B、Cの培地に藍藻を等量加えて、時間と共に藍藻の量がどのように変化するかを測定しました。藍藻の量の測定は 730nm の光(赤色光)を培地に当てたときの吸光度により行い、初期の藍藻量を1として、1日後/4日後/7日後/9日後の藍藻量を測定しました。

測定結果を次のグラフで示します。藍藻の種類によって増殖の程度に違いはありますが、いずれの場合もエルガー資材を施した培地Aで増殖が大きくなっており、エルガー資材の効果が示されています。

(参照元:資料4)

  • アナベナ MDM培地比較
  • シネココッカス MDM培地比較
  • シネコシスチス MDM培地比較

エルガー資材による効果

1.消費者/消費者、共通のベネフィット
  • 土中の微生物相を豊かにする
  • 作物の根腐れを起こさない
  • 土壌の団粒化を促進する
  • 窒素固定による土壌の肥沃化に貢献する
  • ミネラル豊富、栄養豊富の作物ができる
  • 採れた作物の味が濃く美味しい
  • 作物の日持ちが良い
  • 土壌が浄化できる(有害化学物質が減少する)
  • 弱アルカリ性の作物ができる
  • ORAC(活性酸素吸収能力値)が高い
  • 硝酸態窒素が少ない(環境や人体に優しい)
2.消費者にとってのベネフィット
  • 美味しく栄養豊富な作物が食べられる。
  • 鮮度を比較的長い期間保てる。
3.生産者にとってのベネフィット
  • 従来の農薬を多用する農法と比較して土壌が疲弊しない。
  • 土壌に含まれる有害有機物(例:トリハロメタン)を分解し土壌を蘇らせる。
  • 農薬がほとんど必要なくなる。

(引用元:資料1、資料5)

参考情報 資料

資料1

藍藻で環境が変わる 表紙
  • 藍藻で環境が変わる
  • 酒井弥/著
  • 技法堂/出版
  • 単行本 150ページ

資料2

Essential 細胞生物学 第3版 表紙
  • Essential 細胞生物学 第3版
  • ミトコンドリアと葉緑体におけるエネルギー生産
  • B.etal. Alberts/著
  • 中村桂子、松原謙一/翻訳
  • 南江堂/出版 原書第3版
  • 単行本 870ページ

資料3

アナベナ
https://en.wikipedia.org/wiki/Anabaena, 於 Jan.05,2023
シネココッカス
https://en.wikipedia.org/wiki/Synechococcus, 於 Jan.05,2023
シネコシスチス
https://en.wikipedia.org/wiki/Synechocystis, 於 Jan.05,2023

資料4

エルガー通信 3-11 12月号|田中雅彦/著
エルガー資材はシアノバクテリアの増殖に効果的
  • エルガー通信 3-11 12月号
  • エルガー資材はシアノバクテリアの増殖に効果的
  • 田中雅彦/著(平塚農商高校、食品科学科 教諭)

資料5

有機農法を越える究極農法
https://kincyankoubou.com, 於 Jan.06, 2023